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新潟 ワイン特区でまちおこし!規制緩和で特産品を生み出す!

2020年01月20日更新

「どぶろく特区」という言葉をあなたも耳にしたことがあるのではないでしょうか?今回取り上げるテーマは、「特区制度」。何か新しい取り組みが地域で行われてるとすれば、その裏側には特区制度が潜んでいるかもしれません。それでは、特区制度とはいったいどのようなものなんでしょうか。その制度を利用するメリットとは。その制度を利用した地方創生の事例とは―。

PickUp記事「弥彦が新潟初のワイン特区に指定 醸造場に旧保育園活用 観光拠点目指す」(新潟日報モア 8月31日)

日本の規制行政

 日本は、これまで公共の福祉の名のもとに、私人や企業の権利・自由を大きく規制・制限することで、行政目的を達成させてきました。そのことは、日本の安全性、安定性、公共の秩序を維持する上で大きく貢献してきました。そして、日本の経済の方向性の決定についても、政府主導で行われることが多く、そのような体制が「親方日の丸」や「日本株式会社」とも呼ばれてきました。

 一方で、そのような体制が、私人や企業によるイノベーションや新しいビジネスを生み出しにくくしているとの批判も数多くありました。

 本サイトでも取り上げさせて頂いた通り、働き方改革も現在行われており、昨今、日本経済の生産性の低さが問題にされることも多くあります。そして、日本の生産性の低さは、働き方のみに原因がある訳ではなく、この規制行政の在り方にも原因があるのではないかと言われています。

 そこで、規制緩和を行うべきだとの主張も強く存在し、それに反発する既得権益者との間での攻防が繰り広げられてきました。 

規制緩和の突破口

 社会への影響や既得権益者の反発が起こることを念頭に置けば、全国一斉に規制緩和を行うのは、難しいものです。そこで、規制緩和の突破口として考案されたのが、「特区制度」です。

特区制度とは、地域を限定して規制の特例措置(規制緩和など)を認め、当該地域に及ぼす政治的・経済的・社会的・技術的な影響を評価する施策のことをいい、良好な結果が認められれば、その特例措置を全国展開させていくことを目指す制度です。すなわち、特区での結果を風穴とし、全国的な規制緩和に繋げ、経済活性化などに結び付けていくものです。

現在、日本国内で存在する特区制度は、施行順に「構造改革特区」、「総合特区」、「国家戦略特区」が存在します(特殊なものとして、「復興特区」も存在)。

構造改革特区は、小泉内閣の時代に進められたもので、2002年12月に構造改革特別区域法が成立し、翌年4月施行されました。地域の自主性を尊重し、地域の発意とアイデアにより創意工夫を生み、地域間競争を促す枠組みとなっています。そのため、国は、個別の規制の特例措置を行うことの他には、財政負担を伴う措置等の支援を行わないこととなっています。特区設置から一定期間経過後(原則1年以内)、その効果が検証され、結果が良好であれば全国において規制緩和が図られる制度となっています。これを全国展開といいます。

この制度で生まれたのが「どぶろく特区」です。全国で数多くの特区認定がされ人気を博したものの、全国展開には至っていません。それは、全国展開することで特区としての希少性が失われることや徴税コストが増大すること等が理由とされています。

次に、総合特区は、菅内閣のもとで進められ、東日本大震災後の2011年6月に総合特別区域法が成立、同年8月に施行されました。総合特区は、「国際戦略総合特区」と「地域活性化総合特区」の2種に分けられ、複数の規制の特例措置、税制・財政・金融措置等を総合的に行うところに特徴があります。国際戦略総合特区は、大都市などで国の経済成長のエンジンとなる産業を生み出すことを目指す特区であり、地域活性化総合特区は、地域課題の解決や地域産業の活性化を目的とした特区です。

期待された制度ではあるものの、震災後の影響や政権が変わったこと、次にあげる新しい制度が開始されたこともあり、第4次指定以後、指定は行われていません。

国家戦略特区は、第2次安倍内閣のもとで進められ、2013年12月に国家戦略特別区域法が成立・施行されました。国家戦略特区は、総理主導であるところが大きな特徴で、財政措置以外の支援を行うことになっています。

国家戦略特区ロゴ

(引用:国家戦略特区HP)

新潟初のワイン特区認定

今回取り上げた取り組みは、構造改革特区制度を利用し、ワイン特区として認定され、ワインを村の特産品に育て上げ、観光拠点化を目指すという取り組みなっています。

前述したとおり、構造改革特区においては、個別の規制の特例措置が区域内に限って行うことができ、今回の場合は、酒造免許取得について要件緩和が図られ、初期投資を抑えることができています。

そして、以前本サイトでも取り上げた遠野の「ビールの里」構想のように、特産品を生み出すにとどまらず、観光による地域活性化までを視野に入れています。このことは、人口減少が進む地方においては、必ず必要な視点となっています。

さらに、今回の取り組みは、醸造所に閉園となっている旧保育園を活用するというもので、閉校舎の利活用という視点からも参考にすべき取り組みです。

参照記事中にあるように、隣接する新潟市西蒲区もワイナリーが立ち並ぶ地区ということで、ワイン文化の醸成が進みやすく、ライバルとの切磋琢磨も期待され、今後盛り上がりを見せるのではないでしょうか。

iPS細胞も特区制度によって実用化?

それでは、現在日本において、他にどのような特区活用の事例があるのでしょうか。

まず、東京都・愛知県では、自動走行車実証実験促進化のための特区認定がなされています。これにより、関係法令の規定に基づく手続きに関する情報の提供、相談、助言、その他の援助を国が行うものとされ、自動走行車実現が早まることが期待されています。

次に、兵庫県養父市においては、企業による農地取得の特例が認められ、取得可能な法人の範囲要件が緩和されました。これにより、耕作放棄地対策が進み、オリックス、クボタなどの大手を含む企業がニンニク栽培などに参入しています。大手が参入することで、農業運営の安定化が図られ、地域の雇用促進が図られれば、若者の流出に歯止めがかかるかもしれません。

養父市はこの特区認定の他にも、過疎地での自家用自動車の活用拡大の特区認定も受けており、特区制度活用の活発な地域となっています。

この他にも、京都府においては、iPS細胞から製造する試験用細胞等への血液使用の特区認定を受けています。このiPS細胞を利用した最先端医療技術は、今後の日本の大きな成長産業であると期待されており、この特区認定事業が成功すれば、京都の発展にも大きく寄与することでしょう。

実際に特区認定された事例が全国展開に至ったものでは、公園運営の民間委託の事例で本サイトでも取り上げたことのあるコンセッション方式などが存在します。

このように、各地域で特区活用により成功モデルが生み出されれば、その規制緩和が全国展開になった後でも、その地域はその分野の最先端地域とみなされるようになるため、特区制度を積極的に活用した地域が今後勝ち残っていくのではないでしょうか。

国家戦略特区の指定区域

(引用:国家戦略特区HP)

目指すはスーパーシティ構想

これまでみてきた特区制度ですが、現在政府が目指しているのは、国家戦略特区の進化系ともいえるスーパーシティ構想です。

スーパーシティ構想とは、最先端技術を活用し、より良い未来社会を包括的に先行実現する都市構想のことを指し、最先端技術を結集したモデルケースを作るものです。

現行の国家戦略特区は、地域や分野を限定することで、大胆な規制緩和、国が財政支援以外の総合的な支援を行う制度ですが、所管省庁などの調整を行う必要があり、スーパーシティを実現するためには時間がかかりすぎてしまうことが予想されます。

そこで政府が考えているのが、スーパーシティ構想のための国家戦略特区の改正です。改正案では、弊害となる複数の規制について、一括して迅速に規制緩和をすることを可能にする制度とすることが考えられています。

このスーパーシティ構想が、まず1つの地域で実現されれば、この規制緩和の方式がモデルケースとなり、全国展開されることも考えられます。

そうなった場合、日本の各地域で、地域の特色を出したスーパーシティが構築されることになるかもしれません。

スーパーシティ構想イメージ図

(引用:官邸HP)

特区と地方創生

今回取り上げた特区制度。特定の地域で特色のある取り組みを他地域が真似できない形で実現することができるものになっています。そのため、この特区を活用することにより、アイデアと努力次第で地域の独自のウリを生み出すことができます。

その独自のウリこそ、地域に人を呼び込むポイントではないでしょうか。そして、自然、産業、歴史、文化などの地域の特色と組み合わせて特区を活用することが、取り組みの成否を握っているのではないでしょうか。