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萩市かまぼこ店の名物復活 商品開発やカフェなど新たな挑戦続ける老舗

2022年03月28日更新

PickUp記事:萩のローカルグルメ「魚ロッケ」復活 廃業店の味を老舗かまぼこ店が継承

(山口宇部経済新聞2022.02.16)

萩市の特産品である「かまぼこ」は、近年、消費が減少しており、老舗かまぼこ店による新商品開発やカフェ併設などの新しい挑戦が続けられています。

今回、かつての地元名物だった「魚(ぎょ)ロッケ」を、老舗かまぼこ店「矢次蒲鉾店」が継承、復活させました。

同商品は、魚のすり身に玉ねぎなどの野菜を混ぜ、コロッケのようにパン粉をまぶして揚げたもので、老舗かまぼこ店「荒川蒲鉾店」の名物でしたが、同店の廃業とともに販売休止となっていました。

しかし、矢次蒲鉾店店主の矢次勝己さん自身、魚ロッケのファンであり、また「伝統の味を残したい」との考えから、同商品の継承、復活に取り組むことを決意したそうです。

ただ、矢次蒲鉾店では、揚げ製品を作ってはいなかったため、名物復活の実現に当たっては、設備を整えるために市の助成制度を活用したり、荒川蒲鉾店経営者だった荒川さんから、同商品の製造方法を直接学んだりなど、さまざまな準備が必要でした。

販売を開始すると、かつての荒川ファンが、魚ロッケを買いに来店するなどで、連日完売となっており、同じく荒川から受け継いだ「ひら天」と一緒に、市内スーパーなどでの販売も予定しているそうです。

萩のかまぼこは、江戸時代には「長州名物」とされるなど、古くからの特産品である一方、練り物自体になじみのない若者が増えるなどで、かまぼこ店の数は減っており、現在は5軒となっているとのことです。

そのような現状もあり、矢次さんは、「今回の魚ロッケとの相乗効果で、かまぼこにも興味を持ってもらえれば」との期待を抱くとともに、最近の萩市内のかまぼこ店では、老舗が異業種であるカフェを併設したり、新商品開発に取り組んだりと言った新しい挑戦が続いていることにも触れて、「持続可能性を探していかなければならない時代」と感じているのだそうです。

今回、失われていた地元の名物を復活させた同店の試みですが、見方を変えれば、新たな商品を一から開発するのとは、少々異なる方向性の商品開発とも受け取れます。

このような、商品開発の一環としての名物復活が、かまぼこ店の現状にどのような影響をもたらすのか、今後の動向が楽しみです。

萩市の老舗かまぼこ店の新しい挑戦 新商品開発で名物を復活、イベント限定品の提供も

(引用:上;萩GoChi はぎのごちそう公式サイト-【特集】萩の焼き抜き蒲鉾 ~拘り、百有余年。矢次蒲鉾店~下;忠小兵衛蒲鉾本店 はちのたね公式サイト メニューより「はぎかまバーガー」

矢次蒲鉾店は、地元の名物である「魚ロッケ」を継承、復活させました。

若者の練り物離れなどの影響から、萩市内のかまぼこ店は減っていて、残った店でも、新商品開発やカフェの併設など、新たな挑戦が行われています。

これらの取り組みによって、かまぼこの販売促進等を目指すかまぼこ店ですが、今回、地元の名物を商品として継承、復活させたメリットとして、次のようなことが考えられるでしょう。

多くの地元ファンがいた、かつての名物を他店から受け継ぐ形で販売することで、

・すでに知名度のある商品のため、新規顧客の誘致が期待できる

・一定の知名度が見込めるため、商品PRにかかる費用が抑えられる

・名物との相乗効果によって、自社製品のアピール効果が見込める など

さらに、自店舗だけでなく、スーパーなど地元の他店にも商品を卸すことで、顧客が商品を目にする機会を増やせるほか、逆に、その商品の魅力によって、顧客をスーパーに誘引するなど、自身だけでなく、地域店舗の経済活性化にも役立つ可能性があります。

実際、駅前通りや商店街の整備・活性化を進めることで、地域全体を活性化しようという試みが各地で行われ、以下のような成功事例が存在しています。(詳細については、地域商店街活性化事業成果事例集 平成28年度版 https://www.syoutengai.or.jp/jirei/h28/h28_jireishu.pdf

・商店街の集客力を強化、地域活性化につなげる(青森市新町商店街振興組合)

販売力の強化を目的に、地元客をターゲットとして以前から取り組んでいた「一店逸品運動」および「お店回りツアー」(各店それぞれの自慢の“逸品”について、店主自らがツアーガイドとなって商店街の各店舗を案内、逸品を紹介する取り組み)を強化、新たに観光客をターゲットとした「観光客向けお店回りツアープラン」を開催するとともに、情報発信強化として、逸品の紹介動画やカタログを作成、HPなどで情報発信を行ったところ、観光客の誘致に成功、各店舗の売上が向上した。

このほかにも、商店街の街路灯にイルミネーションを設置、冬の夜を彩ったところ、特に若い世代に好評で、地元だけでなく、近隣からも多くの人々が訪問、街の活性化につながった。

このような成功例を考慮すると、今回の地元名物の復活が、地域活性化につながる可能性は、十分あるのではないでしょうか。

また、萩市のかまぼこ店の新たな挑戦は、名物の復活だけではありません。

例えば、萩市の老舗かまぼこ店のひとつである「忠小兵衛蒲鉾本店」の取り組みが挙げられます。(詳細については、萩市ビジネスサポートセンター(はぎビズ)公式サイト「はぎビズ日記」 https://hagibiz.blog.jp/archives/10149820.html および 萩GoChi はぎのごちそう公式サイト【特集】萩人 忠小兵衛蒲鉾 田中 真司さん https://hagi-gochi.jp/feature/chu-kobee

忠小兵衛蒲鉾本店では、以前から、「若い世代にもかまぼこを楽しんでほしい」と「はぎかまバーガー」や「はぎかまロール」を開発、萩焼まつりなどのイベントで販売を行ったり、「お客様への恩返しをしたい」とデリバリーを始めたりと、時代や状況に合わせた柔軟な対応を実施してきました。

さらに、昨年7月には、かまぼこ店としては異業種挑戦となる、カフェ「はちのたね」を店舗に併設し、発売当初はイベント限定商品だった、はぎかまバーガーとはぎかまロールの販売を本格的に開始しました。

同カフェで提供する上記以外のメニューには、自社製かまぼこ、そして、かまぼこの原料であるエソの出汁と地元農園の野菜を使用した週替わりのポタージュスープ、地元野菜を使ったオリジナルデザートなどがあり、食品ロスの解消や地域の農産物活用に目を向けるなど、食品ロス削減、地域資源の活用、地産地消の推進など、地域活性化やSDGsに寄与する活動に積極的な姿勢がうかがえます。

このように、地元の名物を復活させる商品開発に取り組んだり、カフェでSDGsにつながる活動を展開したりと、老舗のかまぼこ店によって、さまざまな挑戦が行われている萩市。今後、特産品であるかまぼこや、地域の状況が、どのように変化していくのか、気になるところです。