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農産物をジェラートに SDGs視野に農家と専門店がコラボレーション

2022年03月14日更新

PickUp記事:熊谷のジェラート専門店と深谷のネギ農家がコラボ 6次産業化、始まる(熊谷経済新聞2022.02.08)

埼玉県のねぎ農家とジェラート専門店が、コラボレーションによる商品開発を通じて、地域活性化や食品ロス削減など、SDGs貢献を視野に入れた取り組みを行っています。

深谷市のねぎ農家「葱や けんもち」の剱持哲信さんは、「地域を盛り上げたい」との思いから、県の6次産業化推進イベントに参加してみたところ、熊谷市のジェラート専門店「ジェラートマリノ」のシェフ池田順也さんに出会いました。剱持さんが、自分の育てた深谷ねぎを使った新商品について、池田さんに相談したところ、「開発するのであれば、やはりジェラートを」と、深谷ねぎを使ったジェラートを提案され、試作を依頼する流れになったのだそうです。

そして、今年の2月には、ネギみそ味とネギはちみつクリームチーズ味(ねぎ蜜チーズ味)、2種類の「深谷ねぎのジェラート」の試作品が完成し、SNSでモニターを募ったところ、早々に問い合わせを受け、約20組に配布を行いました。

新しいことへの挑戦に意欲的な剱持さん、そして、今後も6次産業化に積極的に取り組みたいと言う池田さんの2人がコラボレーションした「深谷ねぎのジェラート」開発。このような6次産業化への取り組みは、近年、地域活性化や食品ロスなど、SDGs達成に貢献する活動へと発展していくことが期待されています。

一般的に、6次産業化は、主に農産物に関する取り組みとのイメージもあるかもしれませんが、実際には、農業分野に限らず、水産業や酪農業、さらには、木工品などを製造する林業でも盛んに行われています。

今回の事例のように、事業者同士のコラボレーションや地域の連携も考慮しながら、地域貢献を視野に入れた6次産業化が可能かどうか検討してみると、SDGsに貢献できるような事業内容に発展させられるのではないでしょうか。

なぜジェラートなのか? 農家と専門家のコラボレーションがSDGsに寄与

(引用:「葱や けんもち」公式Facebook(Negiya kenmochi)

今回のコラボレーションは、農家などの1次産業事業者が、自分の作った農産物(1次産業)を活用して、自分自身またはコラボレーション等による連携で、加工(2次産業)や流通、販売(3次産業)を行う、6次産業化と言われる取り組み事例になります。

農業における6次産業化の例としては、ジェラートに加工するほかにも、例えば、自ら生産したいちごやブルーベリーなどの野菜・果物をジャムやジュースなどに加工・販売したり、自分が育てた農産物を使ったレストラン(農家レストラン)を経営したりすると言った事業が挙げられます。

特に、規格外などの理由から廃棄処分されるなど、これまで活用されてこなかった農産物について、以下のような6次産業化を手掛けることは、資源の有効活用および廃棄ゼロの点から、SDGsに貢献できる可能性が高く、さらに、次に上げるようなメリットも見込めるでしょう。

【2次および3次産業の例】

・冷凍による保存、流通

・ジャムなどへの加工、流通、販売

・加工した商品の輸出

【メリット】

・冷凍することで、未収穫時期を含んだ通年販売が可能となり、収入の安定化が見込める

・加工によって、価値を高めたり、賞味期限を延長したり、遠隔地域で販売したりできる

・輸出が可能になれば、国外へと市場を拡大できる

 

そもそも、これまで言及されていた6次産業化の目的としては、

・1次産業事業者の所得向上

・地域の新たな雇用創出とそれに伴う地域活性化

などが主でした。

しかし、近年においては、上記以外に、SDGsへの貢献がうかがえるような事例が認められており、実際、1次産業者が、他の事業者とのコラボレーションや地域連携を通じて、

・地域内の資源を有効活用する

・資源の地域内循環サイクルを構築する

・複数の産業を行って、可能な限り廃棄をゼロにする

などの、SDGs達成に役立つ活動がいろいろと展開されています。

例えば、食品を加工するだけでなく、その過程で生じる廃棄物を再利用して肥料や動物用飼料を製造し、食品ロスや廃棄物を減らすことで、SDGsに寄与している事例もあります。

このように、6次産業化がもたらすメリットは、事業者の所得向上だけではなく、新たな産業で雇用を創出したり、地域で連携して資源を活用したりと、地域やSDGsへの貢献についても挙げることができます。

今回の事例も、ねぎを使ったジェラートを開発することで、地域活性化や食品ロス削減など、SDGsにつながる成果を期待した取り組みにもなっているようです。

また、コラボレーションによる商品開発を進める中で、ジェラートを開発した背景には、「開発するのなら、やはりジェラートを」と、池田さんが提案したことが大きかったのだそうです。

これまでにも、生産者とのコラボレーション等を通じて、様々なジェラートを開発してきた池田さんが、商品の第一選択としてジェラートを挙げる理由としては、以下のメリットの存在があります。(詳細については、ジェラートマリノHPを参照 https://www.gelato-marino.com/oem%E7%94%9F%E7%94%A3

【ジェラート開発のメリット】

・原則、賞味期限がない

ジャムなどと異なり、原則「賞味期限」と言うタイムリミットがないため、期限切れによる廃棄などのリスクが低い。

・ジェラートの持つ価値の高さとイメージの良さ

​一般的によく見られる農産物の加工品であるジャムやジュース、ゼリーなどと比べて、より高い単価設定が可能。

・年間を通じた販売が見込める

ジェラートが一番売れるのは夏ではあるものの、ジュースやゼリーに比べると、冬にも需要が見込める。また、ジェラートは老若男女問わず人気があるため、より大きな販売市場が期待できる。

確かに、ジェラートの保存には冷凍設備が必要と言ったデメリットもありますが、商品の賞味期限管理が比較的容易だったり、販売時期が制限されにくかったりと、失敗しにくい新規事業であることが予想できます。

ただ、農産物を素材にジェラート開発を長年行ってきた池田さんでも、ねぎを使ったジェラートの開発は初めてだったそうです。それでも、今年2月には、ネギみそ味とねぎ蜜チーズ味、2種類の「深谷ねぎのジェラート」の試作品を開発しており、すでに20組ほどのモニターへの配布を終了しています。

今回の試作を経て、「深谷ねぎのジェラート」が本格的に販売されるようになれば、規格外や傷などで廃棄されるねぎの削減や、地産地消の推進など、SDGsへの寄与が期待できます。今後の展開が楽しみな事業のひとつとなりそうです。