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沖縄の黒糖販路拡大でコスメ開発 県事業で新商品開発を推進

2022年02月14日更新

PickUp記事:JTAなど黒糖コスメ販売 沖縄黒糖の販路拡大を(旬刊旅行新聞2022.1.4)

現在、沖縄の離島で生産された黒糖を使用したコスメ商品が販売されています。

本商品は、沖縄県の「沖縄黒糖販路拡大推進事業」による商品開発の一環で開発されたもので、日本トランスオーシャン航空株式会社と琉球エアーコミューター株式会社の機内販売チーム、そして株式会社JALJTAセールスの商事部が企画開発を行いました。

黒糖のビタミンB群やミネラルが、髪の保湿や健康に効果的であることに着目した3社は、黒糖を使ったヘアケア商品を提案。株式会社ポイントピュールの協力で、ヘアオイルとヘアトリートメントを商品化しました。黒糖以外にも、髪に潤いを与えるとして、沖縄県産のオクラやもずくから抽出したエキスも配合しているそうです。

本商品は「Flapping sky BS(Brown Sugar)」と名付けられ、上記航空会社の機内販売や空港の売店、オンラインショップ「Coralway」で販売されています。

なお、今回のコスメ商品開発の背景には、黒糖の需要と供給の問題が挙げられます。

近年、沖縄県の離島を中心に、さとうきびの生産が増大している一方、販路の固定化やコロナ禍などの影響で消費が減少、製造工場は在庫を抱えており、黒糖の新たな需要開拓が課題となっています。しかし、離島と言う地理条件などから、工場が自力で営業活動や販路開拓を行うのには限界がありました。

そこで、黒糖の新たな販売先の確保や新商品開発を推進しようと、県は「沖縄黒糖販路拡大推進事業」を展開して、黒糖の販路拡大を目的とした商談会や商品開発を進めているのです。

本事業が、沖縄黒糖の販路拡大や製造者の在庫解消につながるのか、そして、コロナ禍のような新たな時代の流れにも対応した方策を打ち出せるのか、今後の動向が気になります。

なぜ黒糖でコスメ商品? 「沖縄黒糖」を使用した商品開発に取り組む理由

(引用:Corawayショッピングサイトより「Flapping sky BS ヘアオイル」

ここ数年、コロナ禍などを背景に、黒糖の消費が減少する中、沖縄の黒糖生産量は、逆に増加傾向にあります。

そもそも「黒糖」とは、沖縄県および鹿児島県の離島で主に生産されている含みつ糖の代表的なもので、さとうきびの搾り汁をそのまま煮沸濃縮し、加工せずに冷却したものを言います。(詳細については、https://www.okinawa-kurozatou.or.jp/about

この黒糖のうち、沖縄県黒砂糖協同組合に所属する3企業1団体の製糖工場(8つの離島工場)で生産されたものが、「沖縄黒糖」と定義されており、生産離島は、多良間、波照間、西表、与那国、小浜、伊江、伊平屋、粟国の8島です。

「沖縄黒糖」は、島ごとに生産するサトウキビの品種構成が異なるなどの理由から、島ごとで黒糖の甘味や苦味、舌触りなどが違っています。(詳細については、https://www.okinawa-kurozatou.or.jp/story/p1)そのため、各島の黒糖が持つ味や特徴に合わせて、「この商品には、この島の黒糖を」と、顧客が黒糖の生産地を指定して商品開発を行うことも不可能ではないのです。

実際、羊羹などの和菓子で有名な株式会社虎屋では、「とらやをめぐる小さなお話」と題して、原材料のひとつである黒糖の産地が、西表島であることに触れています。(詳細については、https://www.toraya-group.co.jp/toraya/small_stories/detail/?id=5

したがって、「沖縄黒糖」は、単に黒糖と言うことで選ばれるだけでなく、独自の味わいのある黒糖であること、つまり、生産地を理由に顧客から求められるだけのポテンシャルがあると言えるでしょう。

産地ごとの個性について、より多くの顧客に知ってもらうことで、黒糖の新たな需要が見出される可能性がある訳ですが、実際には、次のような理由から、製糖会社が直接自社の黒糖の魅力を菓子メーカーなどの顧客に伝える機会に恵まれてはきませんでした。

・卸を介した流通経路がほとんどで、工場独自の流通網がない

米のように、産地やブランド別で販売されるより、全ての産地の黒糖がひとつに混ぜられて流通、販売されやすい。

・離島と言う立地から、出荷はコンテナ単位で行われる

最小ロットが大量となり、工場から直接メーカーなどに卸すことが難しい。

その結果、現在、「沖縄黒糖」の販路はほぼ固定化されてしまっているそうです。産地ごとの味わいを考慮した商品開発や、今回の黒糖コスメ商品のように、黒糖の新たな一面に着目した商品開発に取り組むような、新規顧客の開拓はあまり進んでいないのが実情です。

加えて、コロナ禍による飲食店利用や観光客の減少などで、黒糖の消費が縮小、製糖工場の経営が圧迫されるなど、「沖縄黒糖」を取り巻く状況は悪化し続けています。

この状況を打開しようと、県は、「沖縄黒糖」の新たな需要開拓を目的に、「沖縄黒糖販路拡大推進事業」を開始しました。(「沖縄黒糖販路拡大推進事業」の詳細については、https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/detail.page?IMNEWS1=1937295

同事業の一環として、昨年11月には、「沖縄黒糖」に限定した全国初の商談会が開催され、「沖縄黒糖」の生産事業者4社と県の黒砂糖協同組合が連携し、これまで黒糖を取り扱ったことのない飲食料品メーカーや化粧品メーカーなどとのマッチングが図られました。

その結果、各製糖事業者は、自社商品の良さや特徴をアピールする機会に恵まれるとともに、菓子などの食品以外の商品開発も進んでおり、県による商品開発補助を受けながら、今後も様々な商品開発が行われていくことでしょう。

実際、今回の黒糖コスメ以外にも、「沖縄黒糖」の持つポテンシャルを活かした新商品の開発が進められており、本事業によって、「沖縄黒糖」の販路拡大が推進され、生産者の経営状況等が改善されることに期待が寄せられています。