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新潟 地域商社の役割を担う「マルシェ」 ケーブルテレビ局が主催

2019年03月26日更新

 日本全国で広く行われるようになった「マルシェ」。新鮮な食材が手に入ったり、特色のあるものが買えるということで人気を博しています。しかし、都市部と地方におけるその役割は同じではありません。今回取り上げるのは、東京において新潟県上越・妙高地域の食材をPRする新潟県上越市のケーブルテレビ局の取り組み。地域の特産品を売り込む「地域商社」の意義と課題とはー。

PickUp記事:「故郷の味が東京で買えます!ギャラリーショップオープン」(上越妙高タウン情報2018.09.26)

各地に広がる「マルシェ」

 「マルシェ」とは、フランス語で「市場」を意味し、農産物、水産物、畜産物及び加工品、工芸品などを生産者が持ち寄って販売する集まりのことをいいます。生産者が直接商品を持ち寄るため、安く、新鮮なものが集まる。生産者とのコミュニケーションが取れるのも人気の秘密です。

 「マルシェ」というキーワードの検索数は、データの存在する2004年以降、右肩上がりに増加しており、キーワード認知度や「マルシェ」に対する需要の高まりが読み取れます。

 20101月末に、フジテレビのめざましテレビが「銀座めざマルシェ」という物産館をオープンさせたことが「マルシェ」というキーワード認知度上昇のきっかけになったと考えられます。

 現在では、都市部に限らず地方の過疎地域においても、「マルシェ」と冠したイベントが数多く開催されています。

 人気の背景には、3.11の大震災以降、人と人の繋がりやコミュニケーションを求める価値観の高まりがあります。誰が作ったか分からない既製品よりも、生産者の顔を見て買えるマルシェの商品が、消費者には魅力的に映っています。

「マルシェ」キーワード検索推移

独自調査(出典:Googleトレンド)

地方と都市における「マルシェ」の違い

そんな全国で広がりを見せる「マルシェ」ですが、都市部と地方において、その役割は大きく異なります。

都市部におけるマルシェの役割は、主に、地方生産者の情報発信の場になっています。

都市部において自分の生産物を購入してもらうことで、認知度上昇を目指すとともに、通信販売などを通じてリピーターになってもらう意図があります。

それに対し、地方における役割は、イベント的意味合いが強いです。朝市のような形で行われるものもあれば、半年や季節毎に一度開催されるものもあり、住民の交流の場となっています。

マルシェのイメージ

ケーブルテレビ局が東京で開催!

全国で多く見られるマルシェの主催は、主に行政や生産者組織、小売業者であることがほとんど。ですが、今回取り上げた「雪国マルシェ」の主催はJCV(上越ケーブルビジョン株式会社)というケーブルテレビ局であるのが大きな特徴です。ケーブルテレビ局としての業務の中で、地域の情報が自社に常に集まる仕組みや、地域における企業間連携を広く築いていることが大きな強み。無論、メディアとしての発信力にも優れています。

取り組みとしては、会場にて上越地域生産者の商品の販売を行うと同時に、東京に所在する地方都市のアンテナショップを雪国マルシェ出店業者と販路拡大の専門家を交えて巡る視察ツアーも企画・運営しています。

JCVが雪国マルシェを運営する目的は、上越地域情報の域外発信を行うとともに、上越地域の商品に対する首都圏の評価を収集することです。具体的には、商談会や消費者モニタリングを実施し、上越地域企業の首都圏への販路開拓と商品力アップをサポートします。そして、その取り組み自体が、自社のケーブルテレビ局としてのコンテンツ化に繋がるという仕組みです。

「地域商社」が求められている

このように、特定の地域の魅力ある商品をマーケティング・販路開拓を行い、その収益と市場の生の声を生産者にフィードバックすることで、商品のブラッシュアップを図り、市場から従来以上の収益を引き出す役割を担うのが「地域商社」です。そして、昨今の地方創生の流れの中で、この「地域商社」の誕生・活躍が強く求められています。

この地域商社には、地域商品の仕入れ・販売を行う流通型、地域資源を自ら製造・加工し販売を行うメーカー型、地域資源の販売や活用を狙ったプロジェクトを作るプロジェクトメイク型(PM型)の分類が存在する。今回のJCVの取り組みは、PM型といえます。

そして、この地域商社には、異分野連携や地域間連携が期待されています。すなわち、異分野連携においては、まちづくり分野や観光分野と連携することで相乗効果を生み出し、地域産品の販売額を増やしたり、地域の雇用の増加や賑わいの創出、地域を訪れる観光客の増加を図ることが求められています。また、地域間連携においては、観光分野における一体となったツアーの創出などが求められています。

事例としては、青森のファーストインターナショナル社(FI社)、栃木のファーマーズフォレスト社(FF社)が有名です。FI社は、主に、真っ赤なリンゴが好まれる台湾に青森特産のリンゴを輸出し成功しています。また、FF社は、栃木のイチゴや大谷石採掘場跡などの地域資源を活かし、食農支援事業、ブルワリー、観光事業と手広く地域商社業を行っています。メディアに取り上げられることも多いです。

しかし、成功事例と呼ばれるものはまだまだ多くありません。課題も多く存在しています。

第一に、地方におけるマーケティングや貿易に関する人材の不足です。地域商社を経営するにあたっては、マーケティングや貿易に関する知識が重要であるにも関わらず、地方にそのような人材が不足しており、商社とは名ばかりの組織も少なくありません。

第二に、行政の補助金のあり方の問題だ。補助金が給付された事例では、地域商社自身が補助金頼みの経営となってしまい自立自走ができない場合や、行政が地域商社の経営に深く口出しし、経営合理性のない方針が採られてしまう場合も散見されます。

大谷石採石場跡ツアーの様子

(引用:えにしトラベルFBページ)

上手く機能するためには?

こういった中で、地域商社が上手く機能するために、専門知識の人材不足の問題に関しては、行政による専門家派遣制度などを活用し、自前で専門知識を持った人材を育てていくことが何よりも大事です。

次に、行政の補助金の問題に関しては、まずは補助金に頼らない経営体質を地域商社自身が築き上げる必要があります。また、行政側も、お金は出しても口はなるべく出さない姿勢を保つ必要があります。実績の奪い合いはご法度です。やる気と能力のある事業者に対して、かゆいところに手が届くお金の出し方が最適です。

 大きな可能性を秘めたケーブルテレビ局

前述の通り、JCVは大きな強みを有しています。地域の企業との繋がりが深く、地域の情報が集まりやすいです。その上、メディアとしての情報発信力を有し、視聴者からのダイレクトな反応を集めやすいです。自らの取り組みを映像コンテンツにまとめ上げる力も有します。

このことは、地域商社的な役割を担う上で大きなアドバンテージと言えます。マーケティングを行う上では消費者から得られるデータ収集力が重要になり、ブランディングを行う上では情報発信力が重要になってくるためです。

今回取り上げたのは、雪国マルシェを通じてJCVが地域企業の販路拡大・商品力アップのサポートを行う取り組みですが、ビジネス展開の可能性はまだまだ大きいです。

地域商社には異分野連携・地域間連携が求められる訳ですが、ケーブルテレビ局は業種関係なく連携がとりやすい体質であり、各地域のケーブルテレビ局同士の繋がりも深く、もってこいです。

上越には特産品が多く存在し、観光資源も豊富です。事例で取り上げた2社のように、貿易や観光、イベント展開も考えられます。今後のJCVの動きに目を離すわけにはいきません。