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ICT活用スマート農業で省力・安定化 就農促進で人手不足解決目指す

2023年01月23日更新

PickUp記事:奈良「近大ICTイチゴ」販売 学生らが自動化温室で栽培(奈良経済新聞2022.12.20)

昨年12月、スマート農業の一種「ICT農法」で栽培された「近大ICTイチゴ」を、近畿大学農学部が「ホテル尾花」にて販売しました。

少子高齢化などを背景に、人手不足の深刻化や耕作放棄地の増加と言った社会問題に悩まされている日本の農業。

これらの課題解決を目的に、同学部は奈良県と連携して、「農の入口」モデル事業を展開しています。

本モデル事業では、ICT(情報通信技術)などを利用した「なら近大農法」による農作物の栽培管理方法の確立に取り組んできました。

実際、農学部農業生産科学科(アグリ技術革新研究所兼務)の野々村照雄教授を中心に、奈良キャンパス内にあるICT設置温室において、イチゴのほかにも「近大ICTメロン」などの栽培を実施しています。

そして今回、温室におけるイチゴ栽培に必要な温度調整などの管理にICTを導入し、農作業の自動化を実現して収穫された「近大ICTイチゴ」の市場販売が行われました。

安全かつ安心な農作物の栽培が農業初心者でも安定して行えるよう、栽培管理の負担を軽減するICTの農業導入に取り組む本モデル事業は、多様な層の就農促進ならびに人手不足などの課題解決に役立つことが期待されています。

人手不足解決に向けたモデル事業 県と大学連携でICT用いたスマート農業等を実用化

(引用:平成30年3月発行「平成29年度県内大学生が創る奈良の未来事業ジャーナル」 P.5より「ICT農法を利用したトマト栽培(近畿大学)」)

奈良県では、2012年度から「県内大学生が創る奈良の未来事業」を実施しています。

本事業は、県政における課題の多様化・複雑化を受け、その解決を図るのに、県内の大学等に在籍している学生からの政策提案を募集するものです。

選ばれた提案は、実際に事業化されていて、今回の取り組みに関わる「農の入口」モデル事業もまた、県と近畿大学が連携する形で取り組まれています。(詳細については、平成30年3月発行「平成29年度県内大学生が創る奈良の未来事業ジャーナル」:https://www.pref.nara.jp/secure/194074/H29_%E5%A5%88%E8%89%AF%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB_%E7%B4%8D%E5%93%81%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF.pdf

具体的には、県の課題のひとつである「農業の担い手確保」を目的に、農業事業者の人手不足解決に向けて、同大学校内および近隣に「なら近大農園」を設置し、次に挙げる「なら近大農法」の実用化を試みているそうです。

・「ユニバーサル農法」:

土壌に代わって、古着等の繊維からできたポリエステル媒地を用いる農法。従来の土壌よりも軽量なため、作業負担を軽減できるほか、土壌耕作地とは異なり、長期に渡って物理的・科学的に変化しないことから、栽培方法のマニュアル化などで生産を安定化させられる可能性が高い。作業の負担減および生産安定化が見込める農法であり、誰でも無理なく従事できる農業方法になると考えられている。

・「ICT農法」:

先端技術を農業に活用する「スマート農業」の一種。IT(情報技術)と比較して、ICT(Information and Communication Technology)は、技術の利用方法や得られた情報の活用方法にフォーカスしている。ICTの活用で、生育データの分析や肥料等の調節を自動化できることから、農業初心者でも安定して高品質な農産物を生産できるようになり、個人の経験に頼りがちな従来の農業からの脱却が図れると期待されている。

「なら近大農法」の実用化を目指すことで、若者だけでなく、女性や高齢者、障害者などを対象に含めた円滑な就農支援が実施できるとして、同大学との連携を強めるべく、県は2017年9月に覚書を締結。

同大学学生の協力を得ながら「なら近大農園」を運営し、多様な人材が農業の担い手となれるよう、県と大学が連携して同農法の向上・確立を進めています。

同農法を用いて、これまでにトマトやメロン、イチゴなどの栽培試験を実施しているようですが、今回の取り組みでは、「ICT農法」で栽培したイチゴを実際に市場販売することを試みており、市場評価等のデータを取得・分析することで、より良い栽培法の確立につなげていく模様です。