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JA全農が伊藤園と協働 全国の産地を応援する事業者コラボと行政支援

2022年05月30日更新

PickUp記事:全国の産地を応援するJA全農の「ニッポンエールプロジェクト」 伊藤園との協働で予感させられる一大ムーブメントの可能性(食品新聞2022.04.27)

全国農業協同組合連合会(以下、JA全農)は、株式会社伊藤園(以下、伊藤園)と協働で、日本全国の産地を応援するコラボ商品を開発・販売しています。

この取り組みは、2021年6月にJA全農が立ち上げた「ニッポンエールプロジェクト」によるもので、農産物加工品を開発・販売して全国の産地を応援することが目的です。

本プロジェクト最初のコラボ企業に伊藤園を迎えたJA全農は、単品ではなくテーマ性を持ったシリーズによる商品開発を実施し、「ニッポンエール」ブランドとして展開、全国各地の魅力あふれる農産物の認知拡大に取り組んでいます。

すでにスタートから1年ほどとなる現在も、生産者の顔を意識した、ストーリー性ある商品開発が続けられており、購入者が商品を楽しむ際には、生産者の顔がなんとなく浮かぶ、そんな人のぬくもりを感じさせる要素のある商品ばかりです。

「全国の産地を応援する」と言うテーマ、そしてデジタル社会にある現代だからこそ、強く求められているように感じられる、人のぬくもりと言った、デジタルだけでは得られない要素を持った商品づくりは、今の時代にマッチしているのではないでしょうか。

JA全農、伊藤園ともに、今後も本プロジェクトの「生産者応援」の理念で、顧客に共感、購入してもらえるような商品を開発・販売し続けていくとのことです。

JA全農の「ニッポンエールプロジェクト」 伊藤園と協働でコラボ商品続々

(引用:株式会社伊藤園公式HP 新着情報より)

そもそも、本取り組み以前から、JA全農と伊藤園は協働していました。

実際、以下のようなコラボ商品を開発・販売しています。

・「毎日の健康茶」(リーフ)(2019年3月)

・「濃い健康青汁」(2020年4月)

このような経緯もあって、「ニッポンエールプロジェクト」を立ち上げた際、JA全農は伊藤園を最初のコラボ企業として採択、飲料商品の共同開発をスタートした訳です。

JA全農と伊藤園、本プロジェクトにおける役割はそれぞれ、

・伊藤園

ニッポンエールプロジェクトの主旨に沿った、「全国の生産農家の想い」や「共同開発時のモノづくりの背景」を伝える営業活動を実施、コラボ商品の販売拡大を担当。

・JA全農

「ニッポンエール」のブランディングと、生産農家との対話による課題等の吸い上げを実施。具体的には、産地を訪れて生産者と話をすることで、商品開発者と産地の懸け橋役。

となっています。

本プロジェクトでは、飲料商品「長野県産りんご三兄弟」を、4月より新たに発売しました。

この商品は、長野県発祥のりんご3品種、秋映・シナノスイート・シナノゴールドがそれぞれブレンドされていて、各品種の特長が感じられるような飲料となっているそうです。

これまで同様、商品の販売を通じて、長野県発祥のりんご品種のおいしさと魅力を全国に届けて、県のりんご農家を応援することが目的の商品になっています。

本商品のブランディングに携わるJA全農にとって、伊藤園と言う「大手メーカーの発信力」は、本当に大きなものなのだそうで、本プロジェクトによって、生産者の想いをより多くの消費者に届けられると、その情報発信力に期待しているようです。

このような、事業者同士のコラボレーションによる商品開発や、販路拡大への取り組み事例としては、今回のニッポンエールプロジェクト以外にも、

・グループ企業同士のコラボレーションによる新商品開発や販売拡大

・生産者と小売店がコラボし、商品販促を実施

など、さまざまな事例があります。

また、商品開発だけがコラボレーションの手段とは限りません。

農産物だけでなく他社の商品も活用した、オリジナルのレシピを考案したり、小売業者が専用の売り場を提供したりと、実に多彩な方法で農産物の販促が行われています。

一方で、事業者同士がコラボレーションして、農産物の加工・商品化が行われる場合は、産地の生産者支援にとどまらず、地域の食品ロス対策にもつながる可能性を持っています。

例えば、新潟県の株式会社NSGホールディングスのグループ会社のひとつである、株式会社ベジ・アビオでは、規格外トマトの加工商品化で、SDGs貢献に役立つフードロス対策に取り組んでいるそうです。(詳細については、https://www.nsg.gr.jp/blog/%e3%83%95%e3%83%bc%e3%83%89%e3%83%ad%e3%82%b9%e5%af%be%e7%ad%96%e3%81%a8%e5%a3%b2%e4%b8%8a%e6%8b%a1%e5%a4%a7%e3%81%ae%e8%aa%b2%e9%a1%8c%e3%82%92%e4%b8%80%e6%8c%99%e8%a7%a3%e6%b1%ba%e3%80%82%e8%a6%8f/)

具体的には、規格外との理由で廃棄していたトマトをジュースに加工・販売する取り組みのほか、グループ会社内の別企業と協働し、新商品を開発、期間限定で販売するなどの事例が挙げられています。

この事例からわかるように、青果として販売できず、廃棄されてきたトマトを活用することで、

・グループのブランドトマトの認知度を向上させる

・グループ全体の食品ロス削減につながる

・グループ会社同士の協働を促す

と言ったようなメリットをもたらす可能性が見えてきます。

さらに、グループ企業がお互いの仕事に触れる機会を得ることで、職場環境の改善など、SDGsにつながる新たな活動を見出すきっかけとなる可能性もあります。

したがって、規格外トマトをジュースにして販売する取り組みは、経済的にも社会的にも、企業や産地に貢献する見込みがあるでしょう。

日本の農業従事者は、年々減少し、高齢化(令和3年の推定平均年齢はおよそ68歳)も進んでいます。(詳細については、農林水産省「農業労働力に関する統計」https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html

さらに、コロナ禍による販売停滞などの課題も山積しており、事実、今回のプロジェクトの商品のひとつ「長野県産りんご三兄弟」で取り上げられているりんごの産地、長野県では、自然災害による甚大な被害や後継者の不足などから、農家が減少し続けているそうです。

それにともない、りんごの生産量もまた減っていて、2020年のりんご生産量は、20年前の生産量と比べて、2割以上減少しています。(詳細については、伊藤園株式会社ニュースリリースhttps://www.itoen.co.jp/news/detail/id=25855

SDGsゴールにある、飢餓をなくすと言う重要な目標を達成するためにも、厳しい状況にある日本の農業に対して、消費者個人が取り組めることは何なのか。そしてまた、産地応援を目的とした商品開発が産地にどのような影響をもたらすのか。これらを知るためにも、本プロジェクトの動向には、引き続き注目していきたいところです。