2022年04月25日更新
PickUp記事:「商業高校フードグランプリ」受賞校で特別授業、店頭販売も 伊藤忠食品とイトーヨーカ堂 食品新聞2022.03.30)
伊藤忠食品株式会社(以下、伊藤忠食品)は、「商業高校フードグランプリ」の開催など、商業高校生への教育支援を実施していますが、今年2月には、株式会社イトーヨーカ堂(以下、イトーヨーカ堂)と共同で、愛知県立南陽高校の生徒にオンライン特別事業を実施しました。
商業高校フードグランプリは、地域の特産品を使ってメーカーと共同開発した食品を対象としたコンテストで、商品の出品を通じて、
・継続的な流通と販売が可能となる商品の条件や課題
・商品改良や新商品開発への活用
・地域食文化の活性化
などへの寄与を趣旨に、2013年度から継続開催されています。(詳細については、https://foodgrandprix.com/about/)
今回の特別授業は、第8回商業高校フードグランプリがきっかけで、同グランプリ「イトーヨーカ堂賞」を受賞した同高校の生徒を対象に、イトーヨーカ堂が講師役を務めました。
生徒との質疑応答などを通して、講師は、これまで携わってきた売場づくりや商品開発などの具体例を挙げて授業を実施。
同高校の「うま辛ドレッシング」について、イトーヨーカ堂賞に選出した理由を説明しつつ、最終消費者である顧客と接する小売業の視点も交えた、商品づくりやマーチャンダイジングのポイントについて、アドバイスをしました。
なお、イトーヨーカドー各店舗にて同商品の販売を開始した際は、以下のような販促強化施策を実施し、好調な売上を達成したそうです。(詳細については、https://www.itoyokado.co.jp/__resources__/217e6e2f-7be1-45ff-85bb-18239aee3dfb.pdf)
・出場校生徒および、商品の魅力を五感に訴求するようなシズル感ある写真を載せたチラシ
・店頭での商品POP
・同商品を使用したレシピのリーフレット設置
・南陽高校生徒によるCM動画や同グランプリ紹介動画を店頭サイネージで放映
(引用:商業高校フードグランプリ公式HP)
今回の特別授業のきっかけとなった商業高校フードグランプリは、2013年度から伊藤忠食品が継続的に行っている教育支援です。
商業科目を有する商業高校の学習指導要領で新設された「商品開発」の科目では、商品開発だけでなく、流通に必要な知識や技術の体験的な習得が求められています。
そこで、食品の中間流通業者と言う本業を活かした CSR(企業の社会的責任)・CSV(社会との共有価値創造)の一環として、伊藤忠食品は、商業高校フードグランプリを通じた教育支援によって、食に関わる人材育成に取り組んできました。
CSRとは、Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略称で、企業が社会(株主や地域、環境等)に対して果たすべき責任を指し、企業の成長が社会資源に影響をもたらすことに着目した概念です。
具体的には、本業で得た利益の一部を、環境保護やサステナビリティ、地域貢献などの社会貢献活動に当てることとされ、伊藤忠食品の場合は、CSR基本方針の中で、以下のような取り組みを挙げています。(詳細については、https://www.itochu-shokuhin.com/csr/theme.html)
・環境保護
例)省エネルギー活動の推進、食品廃棄物再生利用 など
・サステナビリティ
持続可能な開発目標(SDGs)などのサステナビリティ関連事項の世界的動向を踏まえ、ESGと連動した課題を重視した取り組みを実施。
例)安心・安全な食の安定供給、環境型社会への取り組み推進 など
・地域貢献
例)商業高校への教育支援、地域産品プロジェクト、フードバンク活動 など
一方、CSVとは、Creating Shared Value(社会との共有価値創造)の略で、企業が本業を通して社会の課題解決を実現していくことを指します。
CSVは、本業であるビジネスをどのように社会の課題解決に役立てていくのか、社会経済的価値を創造する概念であり、次のような取り組みが例として挙げられるでしょう。
・地域の働き手に対して、人材育成プログラムなどの教育支援を実施。
↓
・地域世帯の平均年収がアップし、地域経済が活性化。
↓
・対象地域における商品購買力が上がり、自社製品の売上が向上。
伊藤忠食品では、フードグランプリを通じて、
・商業高校生の開発商品をプロモーションする機会
・物流センターの見学
・流通やマーケティング関連の講義
など、「流通」に関する体験学習等の機会を提供して、高校生と言う次世代の人材に継続的な教育支援を行っていくとともに、地域活性化にもつながるような商品の販売を推進することで、以下のような社会的共有価値を創造し、CSR活動にとどまらない、本業と結びついたCSV活動への発展を目指した取り組みを行っています。
・食に関わる人材の育成
・地域食文化の継承
実際、商業高校フードグランプリは、文部科学省が主催する「青少年の体験活動推進企業表彰」(社会貢献活動の一環として、青少年の体験活動に優れた実績を行う企業に贈られる)にて、伊藤忠食品は、「文部科学大臣賞(大企業部門)」を平成29年度に受賞しており、そのCSR活動による社会価値の創造等について、行政から高く評価されていることがうかがえます。(詳細については、https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1412628.htm)
つまり、今回のような、CSR活動による高校生への教育支援は、より優秀な人材の育成および、自社の人的財産の将来的底上げなど、企業資産のひとつである人材確保の面で、企業にメリットをもたらすほか、地域の特産品を商品開発の題材にする等、地域活性化に役立つ側面も持つことから、地域貢献にもつながる活動と言えるでしょう。
そのため、自社が積極的にCSR・CSV活動に従事していることをアピールできるだけでなく、地域特産品を用いた商品開発による高校生への教育支援活動として、関連する地域にも貢献できる可能性があり、
・自社株主や顧客
・地域住民
・(社会人ではない)高校生
など、さまざまな層に対して、自社のイメージや知名度を向上させられる、すなわち、企業としての競争力や販売力の増強をもたらすような活動になっているのです。